取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

セミが道に寝転んでいると怖い

 築年数20年ほどのアパートに住んでいる。3階立ての3階に。階段は、少し心許ない。歩き方によってはすごく揺れる。力強く歩く人は、家の中にいる私にも階段を登ったり降りたりしているのが分かる。小心者の私は、忍び足で歩く。

 

 朝5時、太陽はそこそこでている。ゴミを捨てに家を出て階段を降りようとした。階段の端に得体の知れないものを見た。思わずびくんとして身体に力が入った。アパートの階段がびくんによって震えた。目で見た情報を脳が解析するのに2秒かかった。カブトムシのおすだ。

 

 生き物は、予想外の動きをするので、怖い。しかもカブトムシは、昆虫界の王様である。動物界でいうところのライオンである。角がいかつい。飛びかかられたらどうする。こっちは、丸腰だ。カブトムシは、とてつもない威圧感を放っている。隙を見せたらやられる。素早く駆け下りた。カブトムシの脇を全力で。朝っぱらから階段は、強烈に振動した。おそらくアパートの住人は地震があったと勘違いしただろう。

 

 カブトムシは微動だにしていなかった。家に帰るとき、またカブトムシの脇を通った。今度はゆっくりと。まったく動かない。なぜさっきあんなにびびったのだろうか。冷静になると恥ずかしくなる。セミの方がよっぽど怖い。