取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

卓球場では空気を読まない

 高校時代からの友人と最近再会し、時々会うようになった。サッカー部で爽やかで社交的でお洒落で賢くて何でも器用にこなす彼は、水泳部で根暗で人見知りでダサくて阿呆で不器用な私から見るとスーパーマンである。そんな彼と卓球で勝負することとなったのが1ヶ月ほど前。マイラケットを購入し、はや半年以上。私が、人生で唯一彼に勝てるチャンスだ。俄然気合いが入る。

 

 一進一退の攻防。彼は、卓球も器用にこなす。中の下の実力を身につけ、初心者には、10回やったら9回は勝てる実力を擁しているであろうはずの私は、敗北した。あっさり敗北した。かなりのショックを受けて、帰りの電車では、サンボマスターの歌声に励ましていただいた。敗因を分析に分析を重ね、分析し尽くした結果、ラケットのラバーが古かったからという結論にいたった。我ながらあっぱれな自己防衛的責任転嫁である。

 

 あれから1ヶ月、再戦のチャンスを得た。卓球場は狭く、それぞれの台の間隔はほとんどない。卓球台は3台ある。真ん中の台が決戦の地となった。両隣には、爽やかなカップルがいた。だが、私には関係ない。狭い卓球場で、激しく動く。汗を撒き散らす。死ぬ気でスマッシュする。サーブも回転をかける。一進一退の攻防。かなり僅差の戦い。勝利の女神は、私に微笑んだ。万歳、空気を読まず、恥も外見もかなぐり捨て貪欲に勝利を掴もうとした結果である。

 

 決戦後、彼が台の横を通り抜けて行くとき、隣のコートの得点ボードのスコアをゼロにした。隣のカップルは、えっという顔になった。空気の読めなさでも彼に軍配が上がった。