取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

サウナはメタボゾンビの墓場?

 サウナはむさくるしい中年男の集まるメタボゾンビの墓場と揶揄されるが、なかなか個性的な人を見かける。

 

 朝5時30分ごろ、サウナに蒸されているとそのお方は現れた。全身が綺麗に日焼けしている。明治のミルクチョコレートと同じくらい黒い。身体に余分な肉は一切ついておらず、肩まで髪を垂らしている。黒光り仙人と命名。足を組み、目を瞑りながら黙々と汗をかいている。私は仙人より先にサウナを出て、水風呂を経由して、椅子に腰掛け身体を休ませていた。ぼーっとしていると黒光り仙人がサウナから出てきた。そこからすーっと進んでいき、水風呂に前のめりに倒れ込んだ。無駄な動作は一切なかった。その様子は、クジラが水面から飛び出て、再び水底へ潜っていく絵を私の頭に思い描いた。ちなみに汗を流さず水風呂に浸かるのはマナー違反だ。

 

 別のサウナで蒸されているときのこと。私の他に3人ほど一緒に蒸されていた。静かなサウナ室。どこからか突然あーという声が聞こえてきた。気のせいかなと思っていたら二度目のあーが聞こえてきた。千と千尋の神隠しにでてくるカオナシの声を少し大きくした感じだ。あーの声の主を特定した。カオナシおじさんと命名。サウナには、時々蒸気を噴き出すものがある。ここのサウナはまさにそれだった。蒸気が噴き出す。あーが短い間隔で2回聞こえた。カオナシおじさんは、あーでサウナと対話している。私は先にサウナを出て水風呂を経由して、椅子に腰掛け休んでいた。カオナシおじさんがサウナから出てきた。水風呂に浸かった。気持ちよさそうなあーが聞こえた。水風呂とも対話している。カオナシおじさんは、浴場でずーっとあーしか言わなかった。

 

 サウナはメタボゾンビの墓場ではない。