取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

うっかりミスの恐怖

 小さなミスは大きな恥につながる。

 

 ある日、お洒落な地下街を歩いているとき、腹痛が突然襲ってきた。トイレを見つけて急いで駆け込んだ。トイレは和式で、ドア側を背にするよう設計されていた。ドアを閉め、ズボンを下ろし、スタンバイした。ほっと一安心だ。ふと遠くから足音が聞こえてきた。どうやらトイレに誰かやってきたようだ。げっ、やだな。ふんばっているとき、豪快なおならをするのも気が引けるので、繊細なコントロールが必要になるじゃないか。そう思いながら、足音に耳をすましていると足音はどんどん近づいてきた。

 

 ほわああー。おじさんが驚きのあまり謎の奇声をあげた。その声があまりにも鮮明に聞こえた。おかしい。ドアを隔てて聞こえるにしてはあまりに鮮明だ。振り返るとドアはフルオープン。おじさんと目があった。尻丸出しの自分とおじさんの目があった。すみませんとなぜか謝る私。尻見られたけど、謝る私。おじさん、足早に去っていく。おそらく、腹痛ですぐにでも踏ん張りたかったのに去っていくおじさん。

 

 ドアの鍵を閉め忘れていた。ドアは自動で開く式のものだった。ほんの少しのミス。鍵を閉め忘れるというミス。私とおじさんという2人の被害者がここに誕生した。