取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

鍵が折れると心が折れる

 寒さが厳しくなってきた今日このごろ。耳がちぎれそうになりながら、手を震わせながら、鼻水をすすりながら必死に戦っていた。そう、自転車の鍵穴と...。

 

 美味しい鍋をつついて、心も身体もポカポカとなり飲食店をでた。自転車のチェーンをはずそうとポケットから鍵を出し、鍵穴に差し込んだ。あれ、鍵が回らない。手元が暗くてよく見えないなか、何度も鍵を回してみる。開かない。スマホのライトで鍵穴を照らしてみた。なんと鍵がぽっきり折れて鍵穴に詰まっている。しかもよく見るとこの鍵は、キャリーバックの鍵ではないか‼︎

 

 さかのぼること、10カ月前。私はキャリーバックを購入した。スペアの鍵も付属で付いていた。鍵は鍵でまとめておけば無くさないだろうと一本は家の鍵とセットにした。もう一本は、自転車の鍵とセットにした。そうか、自転車の鍵とセットにしていたんだ。そんで、間違えてしまったのか。このことを折れた鍵をぼんやり見ながら思い出した。自分よ、なぜ自転車の鍵とセットにしたんだ。なぜそれを忘れてしまったんだ。痛恨のミスである。

 

 鍵穴から折れた鍵をほじくり出す道具を手に入れるため、近くのコンビニへと自転車を担いでいった。自転車を盗難している人と勘違いされてはたまったものじゃないので、いつもの5倍くらい堂々と歩いた。私の自転車です。悪いことしてませんから顏で。自転車の金属製のフレームは容赦なく手から熱を奪っていく。あまりの痛さに何度も自転車を置いた。何してんだ、自分…。

 

 コンビニで毛抜きを買った。はさんで引き抜く作戦である。作戦は失敗に終わった。鍵が深く入っており、つまめない。続いてクリップを買った。店員さんはなんでこんなものを別々に買うのかと不思議に思ったに違いない。先を伸ばして奥まで入る状態にした。まるで空き巣のようだ。奥まで届くぞ。引っかかる感触がした。慎重に鍵ごとクリップを引っ張った。ぬけた。鍵穴がすっきりした。

 

 なぜか感動した。鍵が折れるなんてとんだ災難だった。ついてなかった。