取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

革靴を履いた僕

 革靴に魅了され、伊勢丹の紳士靴売り場でしどろもどろしながら購入した。フロアで一番不審者感を醸し出していたと思う。店員さんが親切で本当に助かった。苦労して購入した革靴をデビューさせようではないか。

 

 自宅から最寄り駅まで徒歩15分ほど。新品の革靴で歩いていく。歩きはじめて数分。痛い、左足のかかとが痛い。驚くほどの痛さ。立ち止まって靴紐をゆるくしてまた歩き出す。痛い、少しダメージは減ったが、まだ痛い。靴擦れが襲ってきた。あまりの痛さに普段の歩行速度が0.5倍になってしまった。後ろから次々と追い抜かされていく。左足を引きずりながら、駅に着いた。

 

 その日は、数少ない友人の一人とご飯に行った。友人は、スラスラと人通りを進んでいく。普段の私は、その後ろをそろそろとついて行くのだが、この日はまったく追いつけない。草食動物が脚を負傷してしまうと死を覚悟しなければならない。街中で靴擦れになり、そんなことをふと思う。

 

 突然の腹痛が襲ってきた。靴擦れと腹痛のダブルパンチは恐怖のコンビネーションである。はやくトイレに行きたいが、はやく歩けない。近くのコンビニに駆け込むが、トイレがない。ドラッグストアに駆け込むが、またしてもない。限界は近い。神に願いながら次の店舗へ。ある、トイレがある。

 

 神はいる。トイレの紙で拭き取りながら思う。革靴をおろすときは、腹の具合がよいときにしなければ…。