取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

髪を染める

 大人への憧れか、お洒落になりたいと願ったからか、単なる興味本位からか、ティーンエイジャーだったころ髪を染めたいと思った。中学3年生の夏休みのこと。近くのドラッグストアで、染料を購入。家には母がいる。優等生の僕が髪を染めようものなら母は怒り狂うに違いない。ということで母の目の届かない我が母校である小学校に向かった。今では、小学校への出入りはできなくなっているが、当時はいつでも入ることができた。一人で学校で髪を染めるのも不審者感極まりない。心細さから友人山田くんに一緒に来てほしいとお願いした。よくもOKしてくれたものだ。

 

 パッチテストがあり、少しびびったが、校庭に面する水飲み場で鼻をつく染料の匂いを撒き散らしながら髪を染めた。後ろ側は山田くんにチェックしてもらった。鏡が辺りに見当たらない。手触りと山田くんのチェックと直感というトリプルチェックで全ての髪に染料が馴染んだ。ちなみに色は茶色である。

 

 染料を流し落とした。『山田くんどう?』「ばっちりだよ。」頭で思い描いた。茶色に美しく染まった我が髪の毛を。家に帰り、夕飯の食卓につく。母が私の頭を見て違和感を感じる。「髪がまだらになっとるよ(笑)」トリプルチェックをかいくぐり、染料を被らなかった髪がたくさんいた。しかし、そのおかげで怒りよりアホらしさが勝り、母は笑った。洗面所で自分の髪色を確認しようとするが、洗面所の電球がオレンジ色で全然分からない。染まった感がまるでない。夏休みが明けたら校則で髪を染めてはいけないと規定している学校の2学期がはじまる。