取るに足らない小噺ブログ

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ファーストクラス

 飛行機の座席には,ファーストクラス,ビジネスクラス,エコノミークラスの三つの階級がある。

 ファーストクラスは最も高級な席であり,その分快適な空の旅を楽しむことができる。

 この度,都内を含む関東圏を走る電車においてもファーストクラスが導入された。

 朝の通勤時間帯,10両編成の車両の一つが,ファーストクラス車両となる。

 月額5万円を支払えば,毎朝同じ時刻に自分の希望する駅を出発する電車のファーストクラス車両の一席を必ず確保できる。

 ファーストクラス導入のニュースを見たN氏は,すぐさまインターネットで申し込みをした。

 「これで快適な通勤をすることができるぞ。」

 

 N氏は,ファーストクラス車両から隣の車両の様子を見て思う。

 「あんなにぎゅうぎゅうになって朝から大変だねえ。それに比べて,なんて快適な通勤なんだ。」

 車両では,コーヒーやオレンジジュースなどの車両内サービスがある。優雅なクラシック音楽も流れている。

 「とてもじゃないが,隣の車両での通勤には戻れないな。」

 

 ファーストクラス車両の導入は大成功。応募が殺到した。

 鉄道会社は,次の月からファーストクラス車両の席を抽選制へと変更した。

 

 N氏は,電車内で圧迫感に耐えながら,ファーストクラス車両を横目で見ている。

 「こんなことなら,ファーストクラスの快適さは知らなきゃよかった。」

 電車は,様々な人の思いをのせ,今日も走る。

 

 PS 星新一先生のボッコちゃんに感化されました。