取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

恋人ロボット

 自分の理想の恋人そっくりに変身するロボットが開発された。

 変身をさせるためには、ロボットの鼻を触る。そのとき、理想の恋人のイメージを強く持つ。脳波をセンサーが感知してロボットは変身する。

 N氏はさっそく手順通りにロボットを変身させた。会社で遠くから見ているAさんを思い浮かべながら。

 「少し雰囲気が違うな。」

 ロボットと本物のAさんはどことなく違う気がする。

 「Aさん、こんにちは。」

 「ええ、こんにちは。」

 「今日の仕事は疲れたかい。」

 「ええ、疲れたわ。」

 「明日の休みは何をして過ごすの。」

 「ええ、何かして過ごすわ。」

 N氏はAさんとあまり話をしたことがなかった。もっとAさんのことを知りたいと思った。

 

 週明けに、N氏は会社でAさんを見かけた。

 「Aさん、あなたとお話がしたくて。今度お茶でもしませんか。」

 「ええ、ぜひおねがいします。」

 

 恋人ロボットは、押し入れの奥でスヤスヤと眠っている。