取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

東京一人旅その③

 2月14日朝6時30分。空港の保安検査場の前にいる。今から手荷物検査を行う。

 

 手荷物検査の列に並びながら注意書きの看板を読んだ。タブレットは、うんたらかんたらと書いてある。えっ、持ち込んではいけないのか?軽いパニック。あっ、カバンからだしとけばよいのか。一安心。ベルトコンベアの上に大きめのトレイが置いてある。カバン、タブレットをトレイの上に置いた。財布やスマホもポケットから出し、トレイに置いた。前の人がジャケットを脱いで置いたので私も真似して脱いで置いた。前の人は、ダンディなおじさんで、いかにも仕事が出来そうなビジネスマンといった感じだ。私が憧れている飛行機に乗るのなんか慣れっこでいといった雰囲気を醸し出している。この人を見本とすることにした。前の人の荷物を載せたトレイが黒い短冊の入り口を通り抜け、検査員がチェックしている箱の中へと入っていった。その間に航空券のバーコードを機械で読み取り、おじさんは金属探知機のあるゲートをくぐっていった。あれ、待てよ。時計はどうするんだ?ベルトは?メガネは?

 

 おじさんのせいだ。おじさんは時計をはずすこともベルトをはずすこともメガネをはずすこともなかった。ちくしょー、金属探知機作動するじゃねーか。もう手遅れだ。自分の順番になった。失敗すると分かっていてもそれをしなければいけない。負けると分かっていてもそれをしなければいけない。恥をかくと分かっていてもそれをしないといけない。人生にはあらかじめダメな結果が出ると分かっていてもそれをしなければいけないときがある。諸君、今がまさしくそのときだ。息を飲みながら航空券のバーコードを機械に読み取らせた。金属探知機のゲートにゆっくりと歩を進めた。すみません、周りの皆様、私がご迷惑をお掛けします。

 

 金属探知機はうんともすんともいわなかった。あれ、鳴らないじゃん。トレイも無事チェックが終わり、私の手元に戻ってきた。軽く高揚している。なんとか突破した。空港はなんて疲れるところなんだ。次こそ東京の地へ降り立つ。

 

〜東京一人旅その④へ続く〜