取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

生活水準は下げられない

 金銭感覚というものは自分の稼ぎに左右される。稼ぎが多ければ多いほど、つまりお金をたくさん持っていれば持っているほど、全財産に対する出費の割合は小さくなるからだ。要するに全財産1億円の人が1万円使うのと全財産10万円の人が1万円使うのでは感覚が全然違うということだ。

 

 生活水準は、稼ぎが増えると上がっていく。家賃は高いが快適な家に住むようになる。月に1回の焼肉は、週に1回行くようになる。年に一度の国内旅行は、年に2度の海外旅行になる。いい暮らし、美味しい食べ物、優雅な娯楽を楽しむようになる。そして、味をしめてしまう。

 

 一度生活水準を上げるとその水準を下まわったとき、いつもより不便に感じたり、満たされなくなったりしてしまう。だからなるべく生活水準を上げすぎないように日々過ごしてきたはずだった。

 

 所有物を整理し、ミニマリストを目指して不要物は捨てた。より慎ましく生活していこうと…。しかし、気づかぬうちに生活水準を上げてしまっていた。そして、味をしめてもうそれをやめることができなくなってしまっていた。

 

 トイレの便座が冷たくて冷たくてたまらない。引越し前の家では便座シートを貼っていた。ボロボロになったので捨てたのだが、東京に来て便座にお尻をつけるのが苦痛でしかなかった。もはや便座シートのない人生をおくれない身体になってしまった。

 

 生活水準は下げられない。便座シートを購入し、トイレの便座に貼りながら、しみじみと思った。f:id:koritsukei:20200416002344j:image