取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

ふれあい?の館

 銭湯のような広々としたお風呂が好きだ。四肢を伸ばし、浮力を感じながら上を向く。ワカメのようにフニャフニャと漂うのもよい。心がデトックスされる。

 

 私の住む島には、2ヶ所お風呂の施設がある。ひとつは高級旅館ので、もう一つは入浴料310円のふれあいの館。私の金銭感覚は、後者とマッチする。

 

 先日、はじめてふれあいの館を訪れた。20時30分ごろ。入口の重たいガラス扉を開けるとすぐ受付がある。受付の奥は、事務所のような部屋で、新聞を読んでるおじちゃんがいた。『すみません』はじめて訪れた所で緊張していたためか、か細い声だった。おじちゃんは、無反応。少しボリュームを上げ、再度言う。『すみません』おじちゃんは、えっこんな時間に人来るの的な表情をしながら、私のもとに歩いてきた。お金を払い、脱衣所に向かった。

 

 脱衣所のクーラーの風が涼しい。ロッカーは一つも使われていないため、鍵がすべてささっていた。裸になり、浴室に入る。貸切だ。大きなお風呂が2つと、身体を洗うところが6ヶ所ほどある。思わずマイケルジャクソンのように『ポウ』とこぼしてしまった。なぜ人は誰もいないところで、つい大声を出したくなるのだろうか。これは私だけなのか?

 

 身体を洗い、湯船に浸かる。誰も気にせず、ど真ん中で浮いて漂ったり、水死体ごっこをしたり、犬かきをした。ここで浴室の扉がガラガラっと開いていたら、確実にビクッとして、顔が真っ赤になるような幼稚な行動だ。ところが誰もやってこない。施設を独り占めし、もういいやってなるほど満喫した。

 

 帰り際、ふと思う。あれっ、ふれあいの館なのに、ふれあいはおじちゃんにお金渡しただけやないかい。いやっ、まてよ、幼稚な自分の一面とふれあっていたのか。

 

 奥が深いふれあいの館である。