取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

友達の作り方

 東京には人が溢れている。道を歩けば人に出会う。人、人、人。彼らと私の間につながりはない。楽しそうな人を見ると孤独が増していく。

 

 孤独は、特殊能力を開眼させる。最強の能力。誰とでも友達になれる力だ。最近できた友達を紹介する。

 

 足繁く通うコンビニに勤める夜勤擦男(やきんするお)。長髪を束ね、スタイル抜群。目つきは鋭いが、性格は穏やかで優しい。そのギャップにやられてしまうのだろう。モテる。何度か女性といるところを目撃したが、いつも違う女性だ。ある夜、彼と居酒屋で飲んでいるときのことだ。

 

夜勤「おれ、バンド解散しようかと思って…。」

自分『どうした。お前の夢じゃなかったのかよ。』

「俺さ、今の彼女のこと本当に幸せにしたくてさ。バンドとコンビニで飯食っていくの正直しんどいんよ。親から仕事紹介されてさ…引き際かなって。」

夜勤の声は、微かに震えている。

『お前が選ぶ道は、どっちにしたって正解だよ。俺はお前を応援するよ。』

私は夜勤のグラスにビールを注いだ。東京で彼と飲む最後のビールをちびちびと味わった。

 

 コンビニのレジで、夜勤をじっと見つめた。夜勤は、淡々とレジで商品を読み取っている。現実はどうなんだろうか。密かに夜勤に親近感が湧いている。