取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

コケを探して

 仕事でゼニゴケを入手するミッションを請け負った。調べてみると、家の周辺で湿気の多いところにあるらしい。

 

 家の周りを散策。自分はどんな風に人の目にうつるのだろう。地面を見ながらウロウロするメガネ坊主。時々地面にしゃがんでじーっと見ている。そんな人を見たら思うだろう、何してるか分からなくて怖い。私はコケを探しているコケ研究家を演じつつ、遠巻きに怪訝そうに投げかけられる視線をかいくぐり、コケを探し続けた。見つからない。家の周りは、断念。

 

 今度はそこそこ大きな公園にきた。ここなら見つかるだろう。スーツで明朝に散策。公園を掃除している人や散歩をしている人からの不思議そうな視線に気づかぬフリしてコケを探す。40分ほど探したが見つからない。革靴は泥まみれ、蚊に刺されまみれ、シャツ汗まみれ。断念した。この公園は断念。

 

 近所の少し離れた家の周りを探す。不審者ではありません。コケを探しているんです。コケ…コケ…、ぶつぶつとつぶやく。見つけた。アパートの影に。せっせと掘りジップロックに入れようとする。アパートから喫煙しにおじさんがでてきた。いかついおじさん。何しとるんだといった表情でこちらをチラチラ見ている。心臓バクバク。私はコケ研究家、私はコケ研究家と暗示して、話しかけられたら、研究で使うコケを採取しているんですと答えるシミュレーションを頭の中で瞬時にした。任務完了。速やかに前線を撤退。おじさんからのドヤりは回避。

 

 謎の達成感を感じつつ、今度はどうやってコケを保存すべきか悩んでいる。