取るに足らない小噺ブログ

クスリとしていただきたくしょうもない小噺を提供します。

とうとう妄想の世界に入りこみました

 私はとうとう発狂しました。発狂して夜の街に駆け出します。すると、山月記の李徴のように虎にはならず、カフカの変身のように虫になりました。まあ、私なら虎よりも虫だなと妙に納得しながらも、モソモソと這っていくと目の前に天狗があらわれました。高尾山の天狗です。「やいや、発狂しせり人間がまた一人、山へ連れ帰って家来にしてやるぞ。」天狗は私を小脇に抱えて天高く飛翔しました。虫になっていた身体は、気づくと人間の姿に戻っていました。なぜこんなに高く飛んでいるのに、高度感に対する恐怖が湧いてこないのでしょうか。二回目の飛翔のために、天狗が地面を強く蹴った矢先、私の身体は宙にほっぽりだされました。そのまま、頭から落下し、次に目を開けたときには、地獄に立っていました。地獄にやってくるのにも妙に納得していますと、向こうから鬼がやってきました。「おい、人間、お前は針の山を登りに行け。」鬼の指差す方を見ると、もうどう見ても歩けるわけがないほど先端の鋭く尖った無数の針の山があります。これは無理だろと思いつつ、口答えした日には、金棒でぶん殴られるのが目に見えます。とぼとぼと針の山に向かっていくと、目の前に小さな糸のようなものが垂れ下がっています。目を凝らして見てみると、どうやらそれは鼻毛のようです。昔、私の鼻からちょろりんと出ておりましたが、見逃してやった鼻毛を思い出しました。これを登っていけば、天国につながっているはずです。私には、クライミング能力なんてないはずですが、すいすいと登れます。しばらく登っていましたが、このまま行けるはずがないと思い、下を見下ろすと、案の定たくさんの地獄の人々が鼻毛糸を登ってきています。ここで、連中から抜けがけしようとしたら糸が切れるんだったなと感づいた私は、何事もなかったかのように再び登りはじめました。しかし、私の鼻毛です。普通に強度不足でちぎれてしまいました。地面に叩きつけられる瞬間、はっと布団の上で目を覚ましました。 以下、最初に戻る。